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大阪地方裁判所 平成5年(わ)1810号 判決

本店所在地

大阪府豊中市長興寺北三丁目六番四六号

都永建設株式会社

右代表者代表取締役

永田一三

本籍

大阪府池田市満寿美町六八六番地

住居

同府同市同町一三番二五号

会社役員

永田一三

昭和一八年一月一三日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官熊谷保出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人都永建設株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人永田一三を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人永田一三に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人都永建設株式会社(以下「被告会社」という)は、大阪府豊中市長興寺北三丁目六番四六号に本店を置き、土木建築総合請負に関する事業を目的とする資本金三〇〇〇万円の株式会社であり、被告人永田一三(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役で、その業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、

第一  別紙修正損益計算書(一)記載のとおり、平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六四二九万〇五〇七円であったのに、外注費を水増計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成二年五月三一日、大阪府池田市城南二丁目一番八号所在の所轄豊能税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二六九三万七三二一円で、これに対する法人税額が九六四万五二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額二四五八万六四〇〇円と右申告税額との差額一四九四万一二〇〇円を免れ、

第二  別紙修正損益計算書(二)記載のとおり、平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億六七五七万三九九六円であったのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成三年五月三一日、前記所轄豊能税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二三七八万〇二四四円で、これに対する法人税額が七九九万八一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額六一九二万〇四〇〇円と右申告税額との差額五三九二万二三〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

注・以下において、証拠中、末尾の括弧内に記載した漢数字は、証拠等関係カード(請求者等検察官)の証拠請求番号を示している。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通(三一、三二)

一  荒木孝三郎(二六)及び末廣隆光(二七)の検察官に対する各供述調書

一  鳥居義昭の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(二九、三〇)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一五通(記録第二一-一号(六)、記録第二一-九号(一〇)、記録第二一-八号(一一)、記録第二一-一三号(一二)、記録第二一-一五号(一三)、記録第二一-一八号(一四)、記録第二一-一九号(一五)、記録第二一-二三号(一七)、記録第二一-二四号(一八)、記録第二一-二五号(一九)、記録第二一-二八号(二〇)、記録第二一-二九号(二一)、記録第二一-三〇号(二二)、記録第二一-三一号(二三)、記録第二一-九九号(二四)

一  大蔵事務官作成の証明書(青色申告書提出の承認取消についてのもの)(三八)

一  登記官伊藤隆孔各認証の法人登記簿謄本(三四)、閉鎖役員欄用紙謄本二通(三五、三六)

一  被告会社作成の証明書(三七)

一  検察事務官作成の捜査報告書(五)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二一-二号)(七)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成二年五月三一日に申告した申告書写についてのもの)(三)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が平成元年四月一日から平成二年三月三一日までのもの)(一)

判示第二の事実について

一  福田保の検察官に対する供述調書(二八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書三通(記録第二一-三号(八)、記録第二一-四号(九)、記録第二一-三二号(二五)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成三年五月三一日に申告した申告書写についてのもの)(四)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が平成二年四月一日から平成三年三月三一日までのもの)(二)

(法令の適用)

罰条

被告会社 判示各罪について、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも、情状により、罰金はその免れた法人税額に相当する金額以下)

被告人 判示各罪について、いずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人の判示各罪について、いずれも所定刑中懲役刑を選択

併合罪の処理

被告会社 刑法四五条前段、四八条二項(判示各罪の罰金額を合算)

被告人 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

主刑 被告会社を罰金一五〇〇万円、被告人を懲役一〇月

刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人に対し三年間猶予)

(量刑の理由)

本件は、土木建築請負を営業目的とする被告会社の設立当初からの代表取締役で、業務全般を統括していた被告人において、被告会社の平成元年四月から平成三年三月までの二事業年度に合計二億三一八六万円余の所得がありながら、うち一億八一一四万円余の所得を秘匿して過少申告し、法人税合計六八八六万円余を脱税した犯行で、脱税額も決して少なくないばかりか、ほ脱率も約七九・六パーセントと高率の事案である。そして、脱税の動機は、将来の不況に備えての資産を留保し、あるいは、子供ら家族の将来のための資産を蓄えるなどのためであったとするものの、結局はもっぱら個人資産を留保する目的でなされたもので、とくに酌むべき余地はなく、その所得の秘匿方法も、外注先に水増請求させ、経費を過大計上するなどの悪質なものであって、被告会社及び被告人の刑責は軽くない。

しかし、他方、被告人は、本件の事実関係を認め、現在十分に反省していると認められること、被告会社においては、本件起訴により豊中市から六か月間の指名停止を受けるなど、既に社会的制裁を受けているほか、修正申告によって、本件ほ脱にかかる法人税本税、重加算税、延滞税のほか、地方税もそのすべてを納付し、現在その経理体制も改めていること、さらに、被告人にはこれまで交通事犯を除き前科はなく、被告会社においても従前から社会福祉団体に寄付を行ない、一定の社会的貢献を果たしてきていることなど、被告会社及び被告人のためにそれぞれしん酌すべき事情がある。

そこで、これら諸般の事情を総合考慮し、被告会社及び被告人をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予することにした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田隆)

修正損益計算書(一)

〈省略〉

修正損益計算書(二)

〈省略〉

修正損益計算書(二)

〈省略〉

修正損益計算書(二)

〈省略〉

税額計算書

〈省略〉

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